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相続に有効な保険の活用法

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相続は誰にでも起こるものです。

平成30年には、1,372,000人の方がお亡くなりになっています。

そのうち相続税は亡くなった方の約8%が対象になっています。(2020年度実績)

東京都心部に限ると相続税を払う方は15%を越えるといわれています。

 

 

被相続人数

(死亡者数)

(a)

相続税が課税された被相続人数

(b)

相続税が課税された人の割合

(b)/(a)

納税者である

相続人数

2015年

1,290,444人

103,043人

8.0%

233,555人

2016年

1,307,748人

105,880人

8.1%

238,550人

2017年

1,340,397人

111,728人

8.3%

249,576人

2018年

1,362,470人

116,341人

8.5%

258,498人

2019年

1,381,093人

115,267人

8.3%

254,517人

2020年

1,372,755人

120,372人

8.8%

264,455人

 

(出典:国税庁)

以前に比べ相続税を支払う方の割合は非常に増えました。理由は「基礎控除」の金額が2015年に変更になったことが大きな影響を与えています。

2014年の相続税の課税割合は4.4%でした。しかし2015年になると約2倍の8%に急上昇しています。

2015年以前の基礎控除は

・5,000万円+1,000万円×法定相続人

でした。それが2015年からは

・3,000万円+600万円×法定相続人

になりました。夫婦、子供2人の一般的な家庭の場合、基礎控除は8,000万円から4,800万円へと大幅の変更になっています。

 

基礎控除が4,800万円の場合、都内に一軒家を持っていてそれなりの金融資産があれば相続税の対象になってしまいます。

今まで相続税というと「お金持ち」が払うもの、というイメージがあったかもしれません。

しかしこれからはいわゆる「中流家庭」においても相続税について対策をしないといけないのです。相続税の対策にはいろいろな方法があります。

数ある相続税の対策の中でもっと簡単に対策を打てる方法が、「保険」になります。今回は、相続対策のための保険の活用について解説します。

 

なぜ保険が相続税の対策になるのか?

この章では、なぜ保険が相続税の対策になるのかについて説明します。

保険が相続税の対策になる理由は非常に簡単です。

生命保険には、死亡保険金というものがあります。

死亡保険金とは、保険の対象者(被相続人)が亡くなった場合に発生する保険金のことです。

この死亡保険金ですが、500万円×法定相続人までは非課税になるのです。

つまり夫婦、子供2人の一般的な家庭の場合、500万円×3人になるので1,500万円までは非課税になるのです。

この1,500万円の非課税分は非常に大きいです。

 

例えば、総資産1億円の場合、保険に加入していなければそのまま1億円に税金がかかってしまいます。

しかし生命保険の非課税枠をフルに活用した場合、

1億円-1,500万円=8,500万円

になります。

保険に入っているか否かで相続税の対象額が1,500万円も変わってくるのです。

保険が嫌いな人は確かにいるかもしれませんが、現預金で持っているのと保険にしておくのとでは大きな違いになることをまず知っておいてください。

話は少しそれますが、預金の相続は非常に大変です。

被相続人(亡くなった人)の預金を下ろすには大変な労力を必要とします。

 

預金の相続手続きの場合、すべての法定相続人の同意が必要になります。

銀行所定の書類に、法定相続人全員の署名と印鑑が必要になります。

預金の相続で必要なものはこれだけではありません。

被相続人の生まれてから亡くなった時までの戸籍謄本が必要になります。

ずっと一か所で生活をしていればそんなに戸籍謄本を集めることは難しくありません。

 

しかし各地を転々としていた場合は住んでいた場所ごとに謄本を集めなければいけません。

これも預金の相続手続きをする際の大きな負担になります。

その点、保険の手続きは非常に簡単です。

死亡保険金の受取人に指定された方の署名と印鑑証明書、本人確認書類(免許証やパスポートなど)を用意して、後は郵送で手続きを完了させることができます。

手続きは大体1週間もあれば完了します。

保険は相続税の金額の対策にもなりますし、手続き面でも非常に優れているものになります。

 

相続対策のための保険の選び方

この章では、相続対策のための保険の選び方について説明をします。

一口に保険といっても様々な種類の保険があります。しかも今は色々な場所で保険を買うことが出来ます。

昔は、保険会社でしか保険を買うことは出来ませんでした。しかし現在は、保険会社はもちろんですが、銀行でも保険を買うことは出来ます。

またここ10年くらいでいろいろな保険会社の商品を取り扱っている保険の相談ショップも増えました。

また昔は円建ての保険しかありませんでしたが今は、米ドル建ての保険やオーストラリアドル建ての保険など多種多様な保険が発売されています。

これだけたくさんの保険があるとどの保険がいいのか分からなくなってしまう方も多いと思います。

そこでこの章では相続対策のためのオススメの保険について説明をしていきます。

 

「ターゲット型の保険」のおすすめ出来ない

最初に紹介するのは、ターゲット型の保険です。

ターゲット型の保険とは、元本が一定の金額まで上昇したら自動的に解約になる商品性の保険になります。

例えば10%上昇したら解約するという保険であれば、10%上がった時点で保険は強制解約になります。

1,000万円で契約した場合、1,100万円になって戻ってくるイメージです。

一見するととてもいい商品に見えるかもしれません。

しかしこのタイプの保険は相続対策の保険には向きません。

何故ならいつ解約になるか分からないですし、そもそもこの解約の仕組みにからくりがあるからです。

 

10%上がったら解約とありますが、実際は保険を維持するための手数料(保険関係費用といいます。)解約の手数料を入れて10%上昇しなければいけません。

この手のタイプの保険の保険関係費用は年間4%程度、解約手数料は10%程度かかるものが主流です。

つまり合計すると上昇分の10%+保険関係費用の4%、解約手数料の10%の合計約25%程度上昇しなければ強制解約にはなりません。

この手の商品を購入するのであれば、別の投資商品を購入した方がよっぽど懸命だと思います。

 

円建ての保険VS外貨(米ドルや豪ドル)建ての保険

円建ての保険と外貨建ての保険は、どちらが良いのか迷うところです。

円建て保険は、為替の影響がないため、保険に加入した段階で保険金額は決まります。

一方、外貨建ての保険は、円に戻すときに為替の影響があるので保険に加入した段階では保険金額は決まりません。円建て保険の方が一見すると安心感があると思います。

しかし、現在の円の金利はものすごく低いので保険料対比、保険金額はあまり大きくなりません。

一方外貨建ての保険は、円に比べて金利が高いので保険料対比保険金額は大きくなります。

為替のリスクをとれるのであれば外貨建ての保険も検討する価値は十分にあります。

 

まとめ

相続対策に保険は有効です。

しかし現在は、いろいろな種類の保険が出回っているので自分だけで決めるのは難しいかもしれません。

信頼できる専門家に相談することが非常に重要になります。

 

【記事を書いた人】

渡辺たかし

都市銀行に11年勤め、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など) 融資関係(アパートローン、中小企業融資、ファクタリング)など、様々な業務に携わる。

現在は金融ライターとして活動中。

保有資格 「証券アナリスト ・FP1級 ・日商簿記1級」