遺産相続で取得した土地について、「せっかくなので何かしらの収益化をしたい」と考えた場合に有効な手段のひとつがアパート経営となります。
所有している土地にアパートを建てて、入居者を募れば、毎月安定した家賃収入を得られる可能性があります。
今回は、そのような「土地あり」ではじめるアパート経営の是非について解説しますので、ぜひお役立てください。
目次
どのような土地がアパート経営に適しているのか?
家賃収入を得るタイプの不動産投資で安定収入を得るためには、当該エリアの現状から将来にかけての賃貸需要について考える必要があります。これはアパートを購入するケースも同様です。
賃貸需要の高いエリアにある
賃貸需要は、近くに駅や商業施設、学校があるなど、人が集まりそうな条件が揃ったエリアに発生します。賃貸需要が大きい方が賃料を高く設定でき、なおかつ空室を発生しづらくなります。
他には病院や市役所、郵便局などが近くにある場合も、土地の利便性が高く、需要が集まりやすいといえます。なお、個人で賃貸需要を調べたいとお考えの方は、以下の記事で解説していますので、あわせて参考にしてください。
地価が今後値上がりすると予想される
現状は賃貸需要がそこまで見込めなくても、将来的に新たな商業施設の建設や再開発が予定されているエリアでは、地価の値上がりが期待できます。アパート経営は長期的に行っていくものですので、将来的な需要増を踏まえた投資も検討の余地があるでしょう。
地価が上昇したタイミングでの物件売却ができれば、当初描いていた以上の収益を得られる可能性もあります。
土地面積60坪以上の土地
アパート経営は基本的に「賃料 × 部屋数」が収益の柱となりますので、物件を建設する土地は比較的広めでなければなりません。目安としては、アパート部分だけで60坪、駐車場まで用意したいなら総計100坪は欲しいところです。
所有している土地でアパート経営をはじめる流れ
所有している土地にアパートを建設する場合のアパート経営スタートまでの流れとしては、以下のようになります。
- 建築会社への相談
- アパート建設の計画と設計
- 契約と建築
- 引き渡しと入居者募集
① 建築会社への相談
まずは不動産会社や建設会社にアパート建設の相談を行います。この際、地元密着型で事業を展開している不動産会社に相談をすれば、当該エリアに関する市場情報や、周辺地域の再開発計画の有無など、その後のアパート経営に必要な情報まで得られる可能性が高くなります。
② アパート建設の計画と設計
アパートの建設計画や具体的な設計内容は、土地の賃貸需要や、周辺エリアの競合物件なども鑑みて煮詰めていきます。なるべくトレンドを抑えつつ、差別化を図れる物件を設計することで、その後のアパート経営において高い入居率を維持することが可能です。
③ 契約と建築
建設会社から提案された内容や資金面などの諸条件がまとまれば、建設契約を締結することで、アパートの施工に入ります。
④ 引き渡しと入居者募集
その後、無事物件が完成したら引き渡しを受けて本格的にアパート経営をスタートさせます。なお、着工から完成までの期間については、1棟10室のアパートの場合はおよそ3〜4ヶ月ほどです。
なお、入居者募集は物件完成前から行い、できれば各入居者との契約まで締結しておく必要があります。管理会社との管理契約については、それより前に締結しておくことが求められますので、着工前になるケースも多々あるでしょう。
土地ありのアパート経営で必要な資金
工事費
アパート建設においては、大きなところではまずは本体工事費が必要になり、内訳としては「本体工事費」「必要な資材の購入費」「人件費」などとなります。
本体工事費は「坪単価 × 延べ床面積」で算出されます。地域によって坪単価は変動しますが、アパートの構造ごとの一坪ごとの建設費用の目安としては以下の通りです。
<構造ごとの建築費用の目役/一坪>
- 木造 … 56万円
- 鉄骨造 … 76万円
- 鉄筋コンクリート(RC)造 … 94万円
- 鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造) …120万円
上記の通り「鉄筋コンクリート造」「鉄筋鉄骨コンクリート造」の方が災害や火災に強いものの、建設費が木造に比べて大幅に上昇してしまいます。そのため、建設するアパートの構造については、調達可能な資金や当該エリアの災害発生率も鑑みつつ決めましょう。
なお、アパートの建設では、本体工事費以外にも「ライフラインの整備」「地盤改良工事」「外溝工事」などの付帯工事を行わなければなりません。
付帯工事にかかる費用は土地ごとに変わってくるためケースバイケースではあるのですが「本体工事費用 × 10〜20%」の割合になることが通例です。
なお、物件も建設する際には設計料も必要となり、その金額については一般的には「建築費 × 3%」程度となります。
諸経費
工事費用以外にもアパートを建設し、経営をスタートするためには多くの諸経費が発生します。例えば、アパートローンの手数料や、火災保険・地震保険などの料金支払いです。
こういった諸経費は「着工時に必要な費用」「工事開始後に必要な費用」に大別され、それぞれ以下のようなものがあります。
<着工時に必要な費用>
- 奉献酒…5,000円
- 初穂料…2~5万円程度
- 水道分担金…100万円~500万円
<工事開始後に必要なの費用>
- 各種保険料…1年分は請負工事金額の0.05%程度
- ローンの借入にかかる事務手数料…5~10万円
- 司法書士手数料…6万円〜
- 入居者募集費用…賃料の1ヶ月(※管理委託方式の場合)
不動産取得税
不動産取得税はアパート建設に伴う“物件取得”に課税される税金で、物件を入手してから半年から1年半が経過したのちに請求されます。税額の計算方法は「固定資産税評価額 × 3%(本則税率)」です(※1)。
なお、固定資産税評価額は一般的には地価の5~6割程度で設定されます。
登録免許税
登録免許税は、アパートを建設した際に行う登記手続きにおいて支払い義務が生じる税金で、計算式は「固定資産税評価額 × 0.4%(本則税率)」となっています(※2)。
なお、登録免許税の課税対象は本来ならアパート・土地の両方なのですが、令和3年度に行われた税制改正により、令和5年3月31日までは土地への課税は免除されています。
印紙税
印紙税は建設契約を締結する際に必要になる税金で、契約書に購入した収入印紙を貼り付ける形で納税を行います。建設工事請負契約書にかかる印紙税については軽減措置が設けられており、現在は契約金額ごとの印紙税は以下のようになっています(※3)。
土地ありのアパート経営をスタートするための資金調達の手段
以上の通り、アパートを建設するためには多額の資金が求められます。以下より、建設にかかる費用を支払うための資金調達の手段について4つ例示します。
金融機関のアパートローン
アパート経営にかかる資金について、多くの場合は金融機関のアパートローンなどを利用して借り入れることになるでしょう。借入可能な金額は物件の収益性や契約人の返済能力にもよりますが、年収の10倍程度が限度となります。
アパート経営は物件を“建設して終わり”ではなく、その後に家賃収入を得つつ、いかにローンの残債や固定資産税などの諸経費を払っていくのかというバランスが大切です。そのため、経営悪化による借り倒れが発生しないよう、無理のない計画を立てましょう。
定期借地権契約
定期借地権の契約とは、所有している土地を期間を決めたうえで第三者に貸し出す契約です。土地を貸し出している間は借りてから賃料を得ることができ、アパート建設に向けた資金を貯める一助となるでしょう。
なお、借り手がそのままアパートを建設した場合は、「建物譲渡特約付借地権」を利用すれば当該物件の購入も可能です。
土地信託
土地信託は借地権契約と似ており、“土地の運用”を事業者に委任し、収益の一部を受け取る方式となります。土地信託なら初期費用を出すことなく土地を活用できますが、事業主体は土地オーナーとなるため、何らかの損失が発生した場合の補填を行わなければなりません。
等価交換方式
等価交換方式は、オーナーと事業者が共同で土地運用を行う方式であり、資金面は事業者が負担するためオーナーにとっては低リスクで投資を行える点がメリットです。
一方で、事業に関する裁量権や権利割合は事業者側の方が多くなってしまうため、投資計画を主導できなかったり、利益率が悪くなったりする点がネックです。
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まとめ
土地ありでアパート経営をはじめる場合、土地の購入費用なしで収益性の高い物件を建築できる可能性があります。一方で、物件や土地を選んで取得する場合とは異なり、賃貸需要の高いエリアを選ぶことはできません。
アパートの建設には多額の資金が必要であることも踏まえると、「本当に安定収入は見込めるのか」について、市場調査による見極めが重要と言えるでしょう。
参考:
※1
東京主税局,「所得税の税率」,https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/fudosan.html
(2022/06/09)
※2
財務省,「登録免許税に関する資料」,https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/e08.htm,(2022/06/09)
※3
国税庁,「建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置」,https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/12/03.htm,(2022/06/09)