FIREを達成するための手段として、注目が集まっている投資であるアパート経営では、毎月安定した家賃収入による不労所得が期待できます。
しかし、アパート経営における収入源は家賃収入だけではありません。
本稿では、アパート経営において詳細な収益計画を立てるために必要な、収入と支出の内訳について紹介します。
目次
アパート経営における収入の内訳
アパート経営における収益の柱は家賃収入ですが、それ以外にも共益費や礼金なども収入源となります。
家賃
アパート経営にかかる年間収益のポテンシャルは「賃料 × 部屋数 × 12ヶ月」に依存する部分が大きいため、「賃料をいくらに設定するか」は最も重要な要素です。
経営する物件の賃料目安は、不動産ポータルサイトで周辺の競合物件の「築年数に対する設定賃料」などを勘案すればおおよその目安はつきます。一方で、妥当な価格を設定したとしても、入居者がつかなかった場合は、値下げを検討しなければなりません。
共益費
共益費は家賃とまとめて毎月支払われる費用で、共用部分の光熱費や清掃費といった維持管理のために徴収します。そのため、直接的な“収入”とは言いづらいでしょう。
礼金
礼金とは、入居希望者と賃貸契約を結んだ際に支払われる費用で、入居にあたっての初期費用となります。一般的に、礼金と同時に支払われる敷金は退去時に返却しなければなりませんが、礼金についてはその必要はありません。
一方で、空室が長く続いた際には、入居者を募るために「礼金なし」の条件で募集をかけるケースもたびたび発生します。
更新料
賃貸契約を更新する際には、入居者から更新料の支払いが行われ、通常は2年契約なら2年おきに家賃の1〜2か月分が収益として加算されます。しかし、近年では礼金と同様に、空室対策で「更新料なし」で入居者を募るケースも少なくありません。
駐車場代
アパートに駐車場を設けていた場合、入居者やそれ以外の第三者に貸し出すことで、毎月一定の収益を得られます。設定料金はエリアにより異なりますが、地方だと数千円、東京23区内や都市部ですと、数万円であることが一般的です。
追加で収益を得たいのであれば、駐車場以外にも、自動販売機の設置なども検討できます。
アパート経営で発生する支出
アパート経営における最終的な手残り金は、前述した収入から、各種支出金を差し引いたものとなります。そのため、経営を行う際にはこういった手元から出ていく費用について把握しておくことが求められます。
税金
アパート経営で家賃収入を得ていくと、年間のトータル収益に不動産所得税が課税されます。アパート経営における不動産所得は「総合課税」に分類され、一般的な所得税と同様、収入が増えるほど税率も増える累進課税制度となっています(※1)。
さらに、アパートを所有していると毎年固定資産税の支払いが必要である点も忘れてはなりません。固定資産税は「固定資産税評価額 × 1.4%(本則税率)」で計算され、算出に必要な固定資産税評価額については市町村から送られてくる納付書を参照します(※2)。
これに加え、自治体によっては「都市計画税」が課税されたり、アパート経営にかかる収入次第では「個人事業税」「消費税」の支払い義務が発生したりします。
アパート経営で発生する税金については、同ブログの下記の記事でもより詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。
アパート経営を行っていると発生する税金とは?|計算や節税の方法を紹介
諸経費
アパート経営をはじめるにあたり、物件の購入費としてアパートローンなどを利用していた場合、毎月ローンの返済金が発生します。それ以外にも、毎月の共同スペースにかかる光熱費などに加え、退去者が出たり、設備が破損したりするたびに修繕費を捻出しなければなりません。
このように、アパート経営における諸経費は、以下のように「毎月固定で発生する費用」「都度必要になる費用」と分解すると理解しやすいでしょう。
<アパート経営で毎月発生する諸経費>
- ローンの返済資金
- 光熱費…5,000円~1万円程度
- 損害保険料…1万円~10万円程度
- 管理費委託料…家賃の5%前後
<アパート経営でその都度発生する諸経費>
- 入退去時のリフォーム代…10万円程度
- 設備交換費用…10万円程度/1設備
- 入居者募集費用…家賃の1ヶ月分(※管理会社との契約内容次第)
- 大規模修繕…100万円~200万円(※10年から15年に一度)
アパート経営で収入を上げるための着眼点
以上のアパート経営にかかる「収入 vs 支出」の内訳を踏まえ、アパート経営において「収益性を高く保つためにはどういった点に着目すればいいのか」について考える必要があります。
利回りを把握する
利回りとは、アパート経営で投資した金額に対する利益率を表す数値です。アパート経営における利回りは、「得られる年間収益」に対する「初期費用や諸経費などの支出金」を鑑みて割り出します。
利回りには「表面利回り」「想定利回り」「実質利回り」の3種類があり、具体的な利益率について知るためには実質利回りをみる必要があります。その計算式は「(年間の最大収益 - 年間支出) ÷ 物件取得費」です。
この利回り率が高いほど、収益性の高い物件となりますので、健全な経営と言えるかどうかについて判断するための指標にしましょう。
なるべく節税に繋げる
アパート経営では不動産所得税の支払いが必要だと前述しましたが、この所得税についてはなるべく節税対策を行うことで、手残りの金額を多く残せます。そんなアパート経営で節税に繋がり取り組みとしては、以下のようなものです。
<アパート経営で節税を行う方法>
- 経費計上
- 損益通算
- 法人化
アパート経営で発生する不動産所得税や住民税は、投資活動で得られた「収入 – 経費 」の最終利益に対して課税されます。そのため、例えば交通費や通信費、物件取得費を減価償却などを経費とし計上することで、税金の支払額を抑えることが可能です。
アパート経営で計上可能な経費については、同ブログ内の下記の記事で解説していますので、こちらもご確認ください。
アパート経営で経費に含まれる資金の用途は?経費計上の勘所も解説
さらに、不動産所得は損益通算の対象となっていますので、たとえアパート経営で赤字がでた場合でも、その赤字分を本業などの黒字所得から差し引いて還付金を受け取れる場合があります。
それに加え、不動産所得税が累進課税であることを踏まえると、多くの収益が解体できるケースでは事業の法人化も視野に入ります。2022年6月現在、普通法人にかかる税率については23.4%と定められていますので、不動産所得が900万円を超える場合に法人を設立すれば、節税メリットがあるといえます(※3)。
青色申告を活用する
前段の節税対策にも関わる話ですが、アパート経営にかかる不動産所得を確定申告する際には青色申告で行う方が多くのメリットを教授できます。
青色申告では複式簿記で資金の流れを記録した財務諸表を提出しなければなりませんが、その分経費として計上できる使途が多く、最大65万円の控除を受けることも可能です。
なお、青色申告を行うためには開業届を出して2ヶ月以内、あるいは青色申告を行う年の3/15までに事前申請が必要です。
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まとめ
アパート経営における収益の柱は家賃収入です。そのほかにも、共益費や礼金などが収入としてありますが、基本的には諸経費と相殺されるものとなります。
アパート経営で安定的な収入を得るためには、収入だけでなく、どういった支出が発生するのかとの視点も欠かせません。節税対策も併用しつつ、なるべく手残りの資金が多くなるように投資計画を策定しましょう。
参考:
※1
東京主税局,「所得税の税率」,https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/fudosan.html
(2022/06/09)
※2
財務省,「登録免許税に関する資料」,https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/e08.htm,(2022/06/09)
※3
国税庁,「建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置」,https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/12/03.htm,(2022/06/09)