アパート経営のような家賃収入が主な収益源となるタイプの不動産投資では、投資開始前に物件にかかる賃貸需要について把握しておかなければなりません。
一方で、賃貸需要はさまざまな要因を加味して判断しなければならない点がネックとなります。
本稿では、アパート経営を検討されている方に向けて、賃貸需要を把握する方法について解説しますので、ぜひお役立てください。
目次
賃貸需要の高さに繋がるニーズ一覧
賃貸需要について考える際に「ユーザーは部屋を借りる際にどういった要素を重要視しているのか」との“ニーズ”を起点にして勘案する必要があります。
例えば、全国宅地建物取引業協会連合会が公開している「不動産の日アンケート(2021年1月)」を参照すると、一般ユーザーが賃貸物件を検討する際には以下の要素を重要視しているとわかります(※1)。
<2020年度 賃貸住宅重視点>
- 家賃
- 交通の利便性がよい
- 周辺・生活環境がよい
- 間取り数・間取りプラン
- 日当たり・住宅の向き
- 住宅の構造が良い(耐震・免震・断熱・バリアフリーなぞ)
- 住み慣れているエリア
- 住まいの広さ
- 宅建業者(不動産会社)・建築会社などのアフターサービス
上記のうち、同アンケートにおいては「家賃」の需要が最も高く、調査対象の7割が重視しているとのことです。つまり、アパート経営で賃貸需要について考える際には「この家賃設定は本当に需要を満たしているのか」という要素が非常に重要であるとわかるでしょう。
このように、アパート経営を成功させるためには「どの程度の収益を得たいか」との“オーナー視点”ではなく、「どういった物件に需要があるのか」という“ユーザー視点”でみつつ、購入する物件を選ぶことが求められます。
賃貸需要の調べ方
個人で賃貸需要を調べる場合の方法としては以下の4つがあげられます。
- 不動産ポータルサイトのチェック
- 不動産会社へのヒアリング
- 人口動態統計の確認
- 再開発事業計画の有無
不動産ポータルサイトのチェック
経営を検討しているアパート周りの賃貸需要をみるためには、まずはLIFULL HOME’SやSUUMOに代表される不動産ポータルサイトで「賃貸空室率」を確認するのが最もわかりやすいでしょう。
この際には、自身が購入しようと考えている物件と、なるべく近い条件に絞って検索するとより必要な情報のみを得られます。例えば「駅から徒歩10分」「2LDK以上」「築◯年」などです。
調査を行った際に「築浅の物件が多いにもかかわらず設定賃料が低い」「駅周辺の物件でも空室」が目立つなどの場合、賃貸需要が低い可能性が高いと定義できます。
一方で、ポータルサイトから入手できる情報はあくまで表面的なものですので、賃貸需要の是非については、後述する他の方法と組み合わせて総合的に判断することが求められます。
不動産会社へのヒアリング
賃貸需要を調べるためには「当該物件近くの不動産会社へのヒアリング」も有効です。この際、地域密着型で長年事業を展開している不動産会社に聞き込みを行えば、当該エリアの過去から現在に至るまでの賃貸事情についての情報を入手できます。
場合によっては、治安や学区などに関する細かな事情への精通に加え、地元の政治家ともコネクションがあるケースも存在し、大手の不動産会社からは得られないニッチな情報を聞くことも十分可能です。
再開発事業計画の有無
各自治体の再開発事業計画に関する情報を把握すれば、購入を検討している物件まわりの今後の「人口増加」「地価上昇」に関する予測を立てられます。
特に、ターミナル駅や大規模な商業施設の建設が予定されている場合は、今後の大幅な賃貸需要の上昇が期待できるでしょう。
アパート経営は長期的に継続する物ですので、こういった先々まで見据えた視点も、安定経営のためには欠かせません。
「人口動態統計」から人口推移の確認
賃貸需要の目安としては、総務省統計局が公開している「住民基本台帳人口移動報告」を参照し、当該エリアの「転入率 vs 転出率」のバランスも参考になります(※1)。
当該エリアにおいて、転出者よりも転入者の方が多い場合、「転入超過」として賃貸需要が上昇傾向にあるといえます。
特に、近年は新型コロナウイルスによるパンデミックに端を発する感染症対策やリモートワークの拡大もあり、地方への移住者も増加しています。そのため、経営を予定しているアパートがある地域で「どのような“人の動き”があるのか」に着目する必要もあるでしょう。
賃貸需要を調べる際の補足事項
複数のニーズを満たすかどうかをチェックする
ユーザーが賃貸する際のニーズについては前述しましたが、賃貸需要を把握するうえでは、特定のニーズのみへの着目は避ける方が懸命です。
例えば「近くに企業の工場があるため、長期的な賃貸需要が見込める」と定義したとします。しかし、このケースでは企業の経営悪化や方針転換により当該企業が閉鎖してしまえば、途端に需要は低下してしまいます。
そのため、アパート経営を行う際には「近くに企業工場があり、“かつ”再開発も予定されている」など、複数の需要を満たした物件を購入することが求められるのです。
ハザードマップについても確認する
ハザードマップとは、河川の氾濫や堤防の決壊といった水害発生時の被害を最小限にくい止めることを目的として、浸水が予想される区域や避難場所、避難経路についてわかりやすくまとめた地図データです。
例えば、東京都品川区のハザードマップは以下のように作成されています。
出典:「浸水に関するハザードマップと浸水実績」(品川区)
経営する物件が災害の被害を受けると、修繕費が発生するだけでなく、その後の賃貸需要にも悪影響を与えかねません。そのため、アパート経営を行う際には、なるべくハザードマップで安全圏に存在する物件を購入するのが望ましいと言えます。
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まとめ
アパート経営を行う前段階として、周辺エリアの「空室率」「設定家賃」「人口動態」などから賃貸需要を予測する必要があります。経営開始後に安定収入を得られるかどうかは、入居率をいかに高く維持できるかにかかっているためです。
賃貸需要の調べ方は、不動産ポータルサイトや不動産会社への聞き込みなどの複数の手段を採り、得られた情報から総合的に判断しましょう。
参考:
※1
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会,「不動産の日アンケート(2021年1月)」,https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/02/2020-fudousan-anke-to.pdf,(2022/06/11)
※2
総務省,「住民基本台帳人口移動報告」,https://www.stat.go.jp/data/idou/index.html,(2022/06/11)