コラム

金融所得課税とは

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金融所得課税とは、株式投資や投資信託、国内FX などの利益に対してかかる税金です。

 

現在の日本の金融所得課税は、利益に対して20.315%で内訳は所得税15%・住民税5%

復興特別所得税(2037年まで)0.315%となっています。

 

2021年9月に岸田文雄総理大臣が誕生し、就任早々、この金融所得税を増税することに意欲を示しました。 

 

結果として、株価などが大暴落しマーケットの拒否反応が強かったことによって、いったんは金融所得課税の議論は先送りになりましたが、今も全くなくなったというわけではなく、くすぶり続けています。

 

そこで今回は、この金融所得課税について説明します。 わかりやすく説明しますので是非参考にしてください。

 

なぜ金融所得課税を上げようとしているのか?

金融所得税を上げようとしている主な理由は2つで、「財源が欲しい」「現在は富裕層を優遇している」との2つの理由からです。

 

「財源が欲しい」 は皆さんご存知の通り、日本は借金大国です。ただでさえ借金が多かったのに、2020年に発生した新型コロナの影響で経済は大きなダメージを受けました。

 

経済を立て直すために過去最大の約35.9兆円の補正予算を組み、そのうち22兆円は国債を新たに発行します。

 

つまり国の借金はどんどん増えている状況になります。国は、新たな財源を喉から手が出るほど欲しいため金融所得課税の強化をしたいのです。

 

もう一つの理由は、現在の金融所得税は、いくら利益が出ても一律のため投資金額が大きく利益も大きい富裕層ほど有利になる仕組みになっているとの声が一定数あることが要因になります。

 

確かに給与所得などの個人の所得にかかる税金は累進課税制度が採用されているため、高額所得者ほど納税金額は多くなり、最大税率は所得税と住民税合わせて55%です。

 

課税される所得金額

税率

控除額

1,000円 から 1,949,000円まで

5%

0円

1,950,000円 から 3,299,000円まで

10%

97,500円

3,300,000円 から 6,949,000円まで

20%

427,500円

6,950,000円 から 8,999,000円まで

23%

636,000円

9,000,000円 から 17,999,000円まで

33%

1,536,000円

18,000,000円 から 39,999,000円まで

40%

2,796,000円

40,000,000円 以上

45%

4,796,000円

 

しかし、真のお金持ちは果たして高額所得者なのでしょうか?答えは違います。

 

真のお金持ちは高額所得者ではなく、すでに金融資産や不動産をたくさん保有している富裕層でしょう。

 

たくさんの金融資産があればリスクの少ない投資でも十分な利益をえることができるからです。

 

この富裕層への課税を強化したいことも金融所得課税を強化したい理由になります。

 

世界の金融所得課税はどのような状況なのか?

日本の金融所得課税は低いといわれることがありますが、世界の金融所得課税はどのような状況なのでしょうか?

 

アメリカの金融所得税の最高税率は、37%+州・地方政府税です。一見すると、日本に比べると高いと思われる方もいると思いますが、この37%という数字は株式などの保有期間が12カ月以下の短期トレード向けに設定された税額で、一般的な運用の場合の税率は0%、15%、20%の3段階になります。

 

アメリカでは給与所得などの金融所得を1つのグループにしており、この金融所得が多いと段階的に税率があがるようになっています。

 

税率が20%になるのは約4300万ドル以上の所得がある人になるので大部分の人は0%、もしくは15%の税率で済むのです。

 

イギリスもアメリカと同様、金融所得によって10%と20%の税率を設けています。

 

富裕層に対する税率は、日本もアメリカもイギリスも大きく変わりませんが、富裕層ではない一般の人に対する税率は日本が最も高いのです。

 

<世界の金融所得税>

日本

一律20.315%

アメリカ

所得や保有期間に応じて、0%・10%・20%・37%+州・地方政府税

いい

所得によって10%・20%

 

もし金融所得税を上げるなら資産形成層には気を使うべき

新たな財源は必要ですし、富裕層への課税を強化したい意図はある程度、理解できますが、もし金融所得税を増税する場合、これから資産を作っていく必要のある資産形成層には配慮が必要でしょう。

 

長年、日本は「貯蓄から投資へ」を目標としており、1800兆円を超える個人金融資産の大部分が預貯金であることは問題視されていました。

 

金融所得税の軽減税率を導入したり様々な試みをしてきましたが、なかなか貯蓄から投資へお金は移っていきませんでした。

 

近年、ようやく投資ブームが起きて、富裕層以外の一般層もようゃく投資に目を向け始めています。せっかく貯蓄から投資への流れができているのに今、資産形成層まで税率を上げてしまうと、投資の熱は一気に冷めてしまう可能性は十分にあります。金融所得税の引き上げには慎重な議論が必要でしょう。

まとめ

今回は、金融所得課税について説明しました。利益に対して税金がかかるのはある意味当然ですが税率は非常に重要です。

 

あまりにも高い税率にしてしまうと、投資意欲を下げてしまい、経済の停滞に結びついてしまいます。

 

税金は非常に重要なので是非今回の記事を参考にしていただき、税金全般に興味をもっていただけると幸いです。

 

【記事を書いた人】

渡辺たかし

都市銀行に11年勤め、資産運用コンサルティング(投資信託、保険、債券、外貨預金など) 融資関係(アパートローン、中小企業融資、ファクタリング)など、様々な業務に携わる。

現在は金融ライターとして活動中。

保有資格 「証券アナリスト ・FP1級 ・日商簿記1級」