両親や祖父母などから贈与を受ける場合にかかってくる贈与税。
相続が発生した時の相続税を逃れるために生前贈与をしても贈与税がかかってくるため、
贈与税は相続税を補完する税金と言えます。
しかし近年は超高齢化が進んでいるため、
このままでは次の世代への資金の移転が行われず、活用されない資金が増えることに。
そんな事態の解消のため、税金を抑えて生前贈与ができるようにした制度が「相続時精算課税制度」。
今回は、相続時精算課税制度の概要やメリット・デメリットについてご紹介したいと思います。
贈与税は高めに設定されている
まず贈与税についておさらいしておきましょう。
基本的に、所得税や相続税といったその他の税金に比べ、
贈与税の税金は高めに設定されています。
それは、贈与には「相続税の税金逃れ」という側面があることに加え、
贈与を受ける側から見れば臨時収入的な性格を持っていて担税力があるとされているから。
それぞれの税金の税率は、
・所得税:5~45%
・相続税:10~55%
・贈与税:10~55%
となっています。
相続税も税率が高く見えますが、
相続税が55%になるのは相続財産が6億円超になる場合なのに対し、
贈与税は3,000万円を超えただけで税率が55%に。
贈与税がいかに高く設定されているのかがわかるかと思います。
親や祖父母からの贈与税を節税できる「相続時精算課税制度」
贈与税が高く設定されている中、
親世代・祖父母世代から現役世代への贈与を増やし、
活用されるお金を増やす目的で創設されたのが、相続時精算課税制度です。
相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税制度を使うと、
合計2,500万円までは贈与税がかからずに贈与することが可能になります。
2,500万円を超えた部分には一律で20%の贈与税が課税。
例えば、相続時精算課税制度を使用して2,000万円もしくは3,000万円を贈与した場合は、
以下の税額となります。
①2,000万円+相続時精算課税制度:贈与税0円
②3,000万円+相続時精算課税制度:(3,000万円△2,500万円)×20%=100万円
※①の場合に残った500万円の非課税枠は、翌年以降に繰り越すことができます
相続時精算課税制度を使える対象
贈与税の負担を軽くできる相続時精算課税制度ですが、
この制度を利用できる対象は以下に限られています。
- 贈与者:贈与をした年の1月1日において、60歳以上の父母または祖父母
- 受贈者:贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の子や孫
つまり、成人である子や孫が60歳以上の父母・祖父母から贈与を受ける場合にのみ、
相続時精算課税制度を利用できるのです。
また、この制度を利用するためには、
贈与した年の翌年2月1日~3月15日の間に贈与税の申告書を提出する必要があります。
相続時精算課税制度のメリットやデメリット!
続いて相続時精算課税制度のメリットやデメリットをご紹介していきましょう。
相続時精算課税制度のメリット
- 贈与税をかけずに財産を次の世代へ移すことができる
- 土地・建物の所有権を早めに確定させることができる
- 将来の相続税を節税できる可能性がある
贈与税をかけずに財産を次の世代へ移すことができる
相続時精算課税制度の一つ目のメリットが、
贈与税をかけずに財産を次の世代へ移すことができるという点。
超高齢化社会を迎えた今、
相続による財産の移動だけでは子世代・孫世代への財産の移動がスムーズに進みません。
そこで相続時精算課税制度を利用することで、
2,500万円までなら贈与税が非課税になり、財産の移転ができるようになるのです。
土地・建物の所有権を早めに確定させることができる
相続時精算課税制度では、
現預金だけでなく土地や建物といった不動産も贈与することができ、
2,500万円までは贈与税が非課税となります。
より気軽に不動産の贈与ができるため、
「この土地は長男に渡したい」「この建物は次女に渡したい」 という希望を、
相続を待たずに叶えられるように。
相続時精算課税制度での贈与と所有権移転登記の双方を行うことで、
不動産の所有権を早めに確定させることが可能になります。
将来の相続税を節税できる可能性がある
相続時精算課税制度で贈与した財産は相続税の対象となります。
その際に計算の対象となるのは、「贈与をしたとき」の財産の金額。
つまり、将来価値の上がりそうな土地・建物を相続時精算課税制度で早めに贈与することで、
相続の際の対象金額を小さくすることができ、結果として相続税の節税ができる可能性があるのです。
相続時精算課税制度のデメリット
贈与時の税金負担を減らせる相続時精算課税制度ですが、デメリットも存在します。
- 一度制度を選択すると暦年課税に戻れず、基礎控除110万円が使えない
- 相続時精算課税制度で贈与した財産は相続税の対象となる
- 土地を贈与した場合に、小規模宅地の特例が使えなくなる
一度制度を選択すると暦年課税に戻れず、基礎控除110万円が使えない
一度相続時精算課税制度を選択すると、取り消すことはできません。
通常の贈与税は暦年課税といい、毎年110万円の基礎控除までは贈与税がかからないというシステム。
相続時精算課税制度と暦年課税は、どちらか一方しか選べないのです。
相続時精算課税制度で贈与した財産は相続税の対象となる
相続時精算課税制度で贈与した財産は、
相続の際に相続税の計算の対象となります。
ただし贈与税の方が相続税より高い税率なので、結果的に税負担が軽くなる場合がほとんど。
暦年課税の基礎控除である110万円を大きく超えて贈与する場合には、
相続時精算課税制度を選択した方がよいでしょう。
おわりに:制度を使って節税しながら生前贈与
ここまで、贈与税の負担を軽くしながら贈与できる相続時精算課税制度についてご紹介してきました。
親や祖父母から子・孫世代への贈与を活性化するために創設されたこの制度。
利用する際には申告書の提出等の要件もありますので、専門家によく確認することをおすすめします。